
#グッスマイラコン 著名クリエイターと語るコンテストの意義
第1回特別ゲスト:島崎麻里
今回は、『BAYONETTA(ベヨネッタ)』1~3のキャラクターデザインや、『レーシングミク2013』衣装など、数多くの作品を手掛ける島崎麻里さんをゲストとしてお迎えしました。本コンテストや、これまでのご活動の中でのご経験・気づきについて、対談形式にてお話しいただきました。
(インタビュアー:企画部カホタン)
グッスマイラコンへの応援イラスト
カホタン
実は先日島崎さんに、本企画(piaprpコラボ 初音ミク×グッスマイラストコンテスト)へ応援イラストを描いていただきました!改めまして、とても素敵なイラストをありがとうございました!「チャレンジ」をテーマに描いていただいたこのイラストのモチーフ、特にアイスの意味について教えていただけますか?
島崎
実はあまり深い意味はないのですが..(笑) 描いた時期が暑かったので、アイスを食べたい気持ちからスタートしました。ミクさんは色々なことにチャレンジできるのが魅力と感じているので、5段アイスにしてそれぞれのモチーフを乗せ、「やりたいこと全部食らってやるぞ」という勢いのミクさんを描きました。可愛いミクさんも好きですが、今回は遊び心と個性を出したかったんです。武者震いかのような汗を描くか迷いましたが、最終的にはポジティブでやんちゃな感じに仕上げました。グッスマさんのロゴも、勝手に色を変えて入れさせていただきました。

島崎麻里さんにご制作いただいたグッスマイラコン応援イラスト
浜子
アイスのトッピングが、「MUSIC」「GAME」といったそれぞれのモチーフになっているのが可愛らしくて美味しそうです!ご厚意でいれていただいた弊社のスマイルマークもとてもかわいいです。
安藝
気の強さが出ていてとてもいい。
島崎
気は強くないですよ!気ではなく、芯は強くあれと思ってます。
安藝
芯は強い方がいいと思う。大事ですね。
島崎
芯が強い人好きですね。 ちなみに今回、髪型もアレンジしましたが、それでもミクさんに見えるのは、「初音ミク」の魅力の幅広さだと改めて感じました。

応援イラストは『スマイルフェス2025東京』にて掲示いたしました。本インタビュー公開とあわせてSNSでも公開を予定しております。
カホタン
それではこのイラストをご覧になっての感想をお二人(安藝・浜子)にも聞いてみたいと思います。
安藝
もう話しちゃっていますが(笑)強そうなところが良いですね。普段の絵柄と少し違う気もして、チャレンジを感じました。
島崎
元々会社員時代の商業仕事がちょっと特殊なカラーの作品だったもので、フリーランスになってからは、デザイン仕事を通して自分本来の絵柄と仕事で求められる絵柄のチューンナップを続けてきました。最近はそのミックスしたもので仕事が来るようにもなりまして、自分的なチャレンジが実り始めたと感じています。
安藝
いつもの島崎さんのイメージからすると、かなり「抜いた」感じがしました。手抜きではなく、ややこしくせずという意味で。今風なのに島崎さんの芯が感じられるのが素晴らしいです。
浜子
(依頼されたテーマに)あわせてきつつも、ちゃんと島崎さんのものだとわかるのがすごいですよね。

島崎
デザイナーとしての経験が長く、イラストレーターとしての仕事が多いわけではないので、絵柄を覚えていただく機会は少ないのですが、印象のアクが強いので覚えていただけているのかもしれません。(作家のブランディングとしては)もっと絵の範囲を絞った方がいいのかと思うこともあります。
安藝
なんだろうな、僕は漫画が大好きだからかもしれないですが。漫画を描かれていることもあって、イラストっていうよりも漫画に入ってる感じがして。絵柄を見せるっていうより「この人を見せる」風に感じました。
島崎
ありがとうございます。そうですね、どちらかというと確かに絵柄を意識するというよりは、漫画の観点から描いているからか、結果キャラクター性が出ているのかもしれません。
安藝
素敵なイラストをありがとうございました。
フリーランスとしてのチャレンジとコミュニケーションの重要性
カホタン
島崎さんはイラストレーターでもあり、デザイナーでもあるとのことですが、初めはどちらだったのですか?
島崎
デザイナーです。今もイラストレーターというのはおこがましいくらいで。会社員時代にデザインの仕事をしていたので、ベースがデザイナーの感覚なんです。
カホタン
では、社内デザイナーとして働いていて、そこから独立されたのですね。
島崎
はい。実データ作り含めてデザインのメイン仕事を1、2本担当させていただいて。29歳くらいで会社を辞めてフリーランスとして活動を始めました。
カホタン
フリーランスになるにあたって、あるいはこれまでに「これはチャレンジだったな」と思うことはありますか?
島崎
デザイナーとしてカラーが強い作品の経歴からフリーになったこともあり、絵描きとしては仕事の間口が限られるんですよね。そして会社員時代の仕事にはもちろん自分のカラーが入っているのですが、やはりオーダーも強くあるものではあります。ですのでそれ以外に自分本来のカラーでも更に仕事で役立てるように、絵柄含め持っている要素を媒体を選ばないように柔らかくしていく、というチューンナップを10年間くらい地道にやってきたのは個人的なチャレンジだと思っています。デザイナーならではのアプローチかな、と。
この業種でフリーとしてやっていく際はどうやって仕事が取っていくのかと質問を受ける時もありますが、その都度自分が思う歩き方しかしていないので再現性がなくて聞かれて困る事も多いですね。ラッキーでしかない(笑)
強いて言えば絵仕事だけが自分の仕事ではないとは思っています。デザイナーはチーム作業も多いので、所属チームの足並みやスキルの得手不得手を意識しないと作品に入れ込みたい核を活かすにしても統制が取れません。自分だけが好きに描いていればいいものではないので、必要な際は人との問題解決やスケジュール管理などもやっていました。私個人はフリーランスの絵描きですが、チームに参加する際は作品や企画がうまくいくことが最優先されるように意識しています。
アクが強い上でこのふたつの動きもあってか、おかげ様で仕事を頂いているのかも、とも思いますね。

安藝
進んで、必要なクオリティを目指して仕事ができる、ということですね。これは結構レアだと思います。
島崎
イラストレーターに振り切っている仕事だと、また違うかもしれませんが。
浜子
出発点が会社で、“チームの一員として始まった”というのがまた違いますよね。
島崎
たしかにそうですね。ゲーム業界出身というのもあります。次の工程があることや、予算の幅なども知っているので、自分がタイミングよく動けないことで何百万もロスが出るかもしれないことも否応なしに知るんです。だから、コミュニケーションスキルがないと共同作業は厳しい。デザインの意図を伝えるのと合わせて自分の仕事を言語化する癖を、その時からつけるようになりましたね。
新人の頃はOK出たデザインを組み込んでもらう際に「このデザインの大事なところは具体的に何なの?」と聞かれても「好きなものを詰めたので全部大事でいい感じなんです!」みたいなことしか言えなくて気持ちだけでした。でも、それを3Dモデルにする時、ある程度論理的に伝えられないと描いた人とは違う人が作るので大事にしていた芯が乗らない場合があるんです。フィギュアもそうだと思いますが、ピシっとした印象が大事なので襟元はこれくらい締めてくれとか、アウトラインを綺麗に見せる為にここは段や皺は作らないでくれとか、そういう小さなことから、企画に合わせた視認性の為にこのパーツをこの角度でつけているので違う形に補完しないでほしい、など大きく様々なことも、伝わらなければ引き継いでもらえないと学びました。
カホタン
フィードバックを言葉にする、ということですね。
島崎
今はアートディレクターのような仕事もさせていただくので発注書なんかで書く時もありますね。そしてデザインの癖が強すぎるものは監修もなるべく自分でやる。そうすると一番ロスが少ないかなと思います。
浜子
自分の作った作品の次がある、ということをわかっている方の考え方ですよね。
島崎
性格上、気になってしまうのもあります。(笑)〆切に対してどうしても融通が利かない、うまくいかない時はあるので都度相談しつつ進める形も多く、割り切りも必要ですが、「今これなんとかしないとあっちが大変になっちゃう」とか「後でこっちがやばくなるから」など思い、落ち着かないですね。(苦笑)
グッスマイラコンで求められている『言語化』
カホタン
興味深いお話しも伺えたので、次はいよいよグッスマイラコンについてお話ししていければと思います。今回のコンテスト、どのようなポイントをみるのでしょうか?
安藝
まず今回のイラストコンテストは、フィギュア用なので、パースもつけず、背景もできるだけ少なくというレギュレーションがあるんです。
浜子
そうですね。フィギュア化前提とすると、このパーツは細かすぎるなとか、ここまで細かく色を塗ったら再現性に問題がある、といったことをみなさん考えると思います。最終的に、イラストからフィギュアへと落とし込むのが今後の我々の仕事になってきます。
大賞作品に選ばれているのは、そういった要素を押さえている作品になります。
安藝
そうですね。そこが一番みるポイントかもしれない。
浜子
絶対映えるだろうとか、素材感を面白く作れそうだなとかというポイントでも選びがちですよね。「(フィギュアにしたら)売れそうかな」と。
島崎
最初の頃から作品を見ておりましたけど、第1回の大賞作品は面白かったですね。和風だけど未来感もある。
安藝
サイバー着物はまだ誰も作ってないし。

第1回大賞作品・岡田さん
浜子
テーマの汲み取りが面白かったんですよね。テーマは『スマイル×フューチャー』だったんですけど、全く笑っていない。あれは、未来のミクが筆を持っていて。原型師、塗り師なんですよ。グッド「スマイル」カンパニーと、クリプトン・「フューチャー」・メディアさんの初音ミク、というテーマの深読みをちゃんと汲み取っていただいている作品だったんです。
カホタン
なるほど。“笑ってないじゃん”って思われがちかもしれないですが、ちゃんとそこを汲み取っているのがポイントだったのですね。
安藝
僕的にはかなりポイントでした。
カホタン
このコンテストで、例えば「これはフィギュア化だから前提条件は..」とか、「魅力を言語化できるようにしなくちゃいけない」といったことは、個人でやっているイラストレーターさんだったら、ある意味誰からも教われないですよね。自分で気づくしかないというか。
浜子
そうだと思います。ただ、このコンテストを通して賞金を勝ち取っていく上で、そういったコンテストの前提条件や作品で表現したいことを自分の中で言語化して、作品に反映する力は必要だと思っています。
安藝
今は一次創作をSNSで発表するなら、もしかすると言葉は余分かもしれません。1枚でいかにインプレッションを得るか、個性を感じてもらうか。
島崎
SNSでは対価が発生しないので、日常のムーブメントの中で見たい絵である方が大事そうですね。今は「ならでは」のノウハウがある程度体系化されている印象です。
商業案件では、クライアントの存在がまずあり、チーム戦で回すことも多いので、また違った視野で制作することになります。その意味でもこういった企業主催のイラストコンテストはおもしろいのではないかと思います。(コンテストを)若手の登竜門として活用するのはどうかといった話は、同業同士の飲み会などでも出ますね。
グッスマイラコン誕生秘話!賞金がもらえるコンテストに。
浜子
そういえば本企画(グッスマイラコン)も、島崎さんたちが飲み会でお話しされたんですよね。
安藝
偶然グッスマの取締役と島崎さんたちが隣の部屋でご飯を食べていたんです。
カホタン
偶然一緒だったんですね。
安藝
そうそうそう。弊社の取締役と、島崎さん、ワダアルコさん、米山舞さんです。
カホタン
すごい素敵な会ですね…!!
安藝
いや、なんか隣がうるさいなと思って(笑)
一同
(笑)

安藝
最初は4人で乙女ゲーの話をずっとしてたようでしたが、途中から一緒に食事させてもらいました。 その時、スマートフォンのソシャゲバブルが当時イラストの世界にもあったが、現在落ち着いてしまったという話を聞きました。絵が大量に必要で、絵師がいっぱいフリーランスにデビューしたと。社員絵描きも軒並みフリーになって。
島崎
はい、 一時、絵を月に3、4枚描いたら会社員くらいのお給料は賄えるようになっていたと思うので多くの人がフリーランスになった印象です。
カホタン
なるほど。その当時はそういう時代だったんですね。
安藝
もっと前で言うと、pixivが戦場みたいになっていて。ランキングで1位になるとみんなが見てデビューする、というような場になっていました。
島崎
pixivが注目される場、勝手に広告してもらえる場になってましたよね。ランキングによって注目を集めるストレートなシステムで交流の場としても活用されていました。
安藝
それで名前と絵が一致する人たちが増えていったわけだよね。それがよりSNSの方に移っていくというか、Xのフォロワー数とか、どう評価されるかっていうのが広がったし細分化されていったなと。
島崎
フォロワー数とかお気に入り数とか、そういう数値化ですね。
安藝
好きなものを描く人もいれば、「ヒット力」「攻撃力」という観点でイラストを上げる人もいる。そこで今のSNSお絵描きノウハウがスタートし始めて、今SNSで結構実ってますよね。
浜子
そうですね。キャラクターというより、これが実装されたからとか。 バズるキャラをこのタイミングで出すとか。
安藝
そうそう。そんな風に色々ある中で、ソシャゲバブルの落ち着きもあって、なかなかイラストの仕事が減ったと。pixivでも目につくのにうまくピックアップされない。ただ自分のイラストを仕事にしたいチャレンジャーは増える。で、どうするって話をしていて。
島崎
はい、ワダさん(ワダアルコさん)と私も、商業仕事をひとつの軸足にしてきた人間なんですが、ただ今の若手が同じような仕事がしたいと言った時に、圧倒的に入り口がない。仕事自体の数が少なくなっていると感じます。
それに加え、先ほどのお話通り、ソーシャルゲーム時代に絵描きの分母もものすごく増えたのにバブルが終わり、仕事の総数自体が縮小してしまい、我々の先人世代もまだまだ現役ですし、いまや商業仕事の方針もかなり変わってきているので、いろんな意味で枠は行き渡らない時代になったな、と。
安藝
君らもどかないし?(笑)
島崎
はい、正直、我々もどかないし(笑)。
一同
(笑)
島崎
良い絵を描かれるし、真面目に協力関係を大事にしていて、チームの一員として商業仕事に取り組みたいと思っているフリーランスの若手の方々は今でも多いです。そういう子たちも「昔ここにまず応募してみたらいい!というようなコンテストがなくなったね」という話をしていました。そんな話をしながら振り返ってみると、ワダさんも私も、学生の頃は雑誌が全盛期だったので、雑誌に投稿してお小遣い稼ぎをスタートする、という感じだったなあ、と…
安藝
そうだよな、『ファンロード』とか。
島崎
そう、他にも様々な雑誌で投稿してはポイントや賞金をもらったり。
安藝
そこでしか人の絵が見れなかったんだよね。
島崎
そうなんです。ネットのHP時代より前の話になりますが、昔は雑誌でしたね。ただ雑誌だと掲載の大小はあっても閲覧数はわからないし、絵柄の流行りも画一的じゃなかったので、いろんな絵柄が存在していて正解不正解の判断がもう少し個々人の「好み」に寄っていたと思います。当時は自分のレベルを客観視する機会が限られていた。わからないからこそ好きにノリノリに描けた部分もありますね。
そんな時代なので審査も選考員の好みや気分でピックアップされていた印象でした。なので自分が好きなものを描いてヒットするとダイレクトに嬉しいし、プラス賞金をもらえるとモチベーションもアップする。今回のコンテストのような感覚ですね。その感覚のまま、今もって商業仕事に来ているという実感があります。
そんな感じでそういったきっかけとなるコンテストが今は少ないよね、という話をしてたんですよ。それで安藝さんにたまたまお会いしたんで、「コンテストをやっていただけませんか?」と相談して、賞金もつけてくれとお話させていただいたんです。名誉やフィギュアだけじゃなくて仕事感覚になるように賞金をつけてほしいって。
安藝
そうですね。どれくらいの金額にすればいいのかという話をして、仕事と同じようにしようと。そうするとプロも来るし。アマチュア対プロみたいなのを、僕ももっともっと演出したかったんです。その際、冒頭でも触れましたが、キャラクターとしての魅力があり、イラストレーターがそれぞれ「自分ならでは」を表現しやすい「初音ミク」さんを題材とさせていただきたいなと思いました。そういった経緯でpiaproさんにご協力いただき、コンテスト(コラボ)を開催するに至りました。
全12回開催。多くのチャレンジができる仕組みへ
浜子
本企画ですが、実際にプロの方の応募もいただいています。ちょうど昨日、第6回テーマ「レインウェア」の結果が昨日発表されたんですけど、さいねさんが受賞されました。

第6回大賞作品・さいねさん
浜子
1回目からもう投稿してくれていて。その際は大賞ではなかったのですが、別の賞を受賞されました。このまま投稿を続けられたらどこかで大賞を受賞されるのではと思っていましたが、第6回のテーマで獲得されました。
カホタン
なるほど。全12回開催っていうのもあって、複数回応募されたり、中には何回か賞に選ばれる人もでてきているんですね。
島崎
1回違う賞に入っていたけどまだまだ次回は大賞を狙うぞ、とか。次は私の得意なお題かも、みたいにコンテストを追いかけますよね。
浜子
そうですね。テーマがやっぱりたくさんあるっていうのも、“向き不向き”みたいなものが応募する側も色々考えられて良かったのかなと。

島崎
本企画を提案した際、「1年間で12回やるとか、やっぱ期間があった方が盛り上がりますよね!」みたいに本当に好き勝手、安藝さんに話して。
安藝
その通りになっちゃった。
島崎
ありがとうございます!これ怖いのは、こんなすぐ本当に満額で実現されると我々思ってなかったので、なんか絶対飲み会の話だしスルーで終わると思ってたので…それが気が付いたら…(笑)
安藝
元々我々も望んでたことでもあるし、ミクさんの界隈からもっと力のある絵描きさんに出てきてほしい。我々も基軸の違うフィギュアを作っていきたいけど、僕たちだけで考えてると、つい米ちゃん(米山舞さん)に描いてもらおうかとか、ビジネス目線になっちゃうんですよね。それはもちろん正しいことではあるんですが。
こんな絵描きさんもいるんだとか、この衣装のアイデアは我々から出てこないよねとか。商業ナイズされてないからこそ出てくる案みたいなのもやっぱりあります。
島崎
お客さん受けがいいものに慣れている人が弾いて描かないようなデザインを勢いのみで平気で描いてきたりするから面白いですよね。そこから「新しい好き」が見つかる場合もある。こういうのが好きな人いるんだろうなと見えるだけで、仕事に慣れすぎちゃった視野がフラットに戻ります。
安藝
そうだね。だから、今回のコンテストは審査するのも面白いし、僕たちにも学びがある。それがまたフィギュアになるっていいことじゃないですか。絵を描かれる方の多くは、自分のイラストがフィギュアになることを喜んでくださると思ってて。
島崎
本当に嬉しいと思います。
安藝
喜んでくださると、やっぱり僕らも嬉しいんですよ。それで、フィギュアになったっていう過程を経て世に出たっていうことは、その人はこう、少なくともグッスマと何らかのやり取りを繰り返して、ちゃんと仕事したってことなんじゃないですか。そうするとその方は、ちゃんと自分のイラストを以てメーカーと向き合って仕事できる人なんだっていう。
浜子
実績にちゃんと繋がりますよね。
安藝
仕事発注してみたいな、となります。
本企画をきっかけに、さらに次のステップへ。
カホタン
このコンテストがデビューのひとつというか、まさに登竜門になるという。 浜子さんが前回のインタビューで、このコンテストを経歴に書けるようにしたいと答えていたので、まさにそういうものになるといいなってことですね。
島崎
「このイラストレーターさん、ピックアップされて、ちゃんと仕事になったんだ」って、みんなが経歴をみるとわかるってことですよね。いいですよね。
また、題材がミクさんというのがすごく最適ですよね。ミクさん仕事はKEIさんの元デザインがあった上でのアレンジデザインが要件ですが、ちょっと変わった枠だなと感じていて、そのアレンジデザインの作業には一次創作の匂いも入ってると思うので、自分の絵を結構入れても、ミクさんはミクさんに見える。
安藝
そう、キャラクターになってるもんね。
島崎
元デザインの強さ故なんでしょうね。もちろんボーカロイドソフト故の音楽をベースカルチャーとして育つバックボーンがあった上でのコンテンツだと思うんですけど、絵描き目線、デザイナー目線だと、やっぱり初音ミクの初代のデザインがものすごく強いなと思っています。自分の執着を乗せても、髪色とツインテールみたいな形さえキープしておけば、ミクさんに見える。これも大きな魅力で、コンテストのモチーフとしては非常に最適だと思います。
安藝
その一方で、ミクのデザインって無限にもう出てるじゃないですか。どんなデザインしてもどこかで見たことあるかもと思っていて。そこもまた今回のコンテストで応募者のみなさんが悩んでいる点だとは思います。
ミクたちのバリエーションは数百あるし、絵を描くのが好きな方々が世に発表したものは、さらに何十万、何百万ぐらいあるかわからないけど、無限のデザインがあって隙間がないです。
島崎
そうですね。入りやすいけど、敷居は思ってたよりもちょっと高いみたいな。
浜子
それも審査する上でも結構難しいポイントにはなりますね。
安藝
浜子がミク博士なので。 この絵すごいいいねって言っても、「これあの、2年前のあのミクと基本が一緒ですよ」ってなるんですよ(笑)ハマペディア。
一同
(笑)
安藝
ノウハウってやっぱり、どこかで最大公約数にかぶってくるものだと思うので、どうしても似てくると思います。特に「可愛い」っていうモチーフだと、結構みんなが共感するメジャーどころははっきりしちゃうと思っています。そんな中でも、見たことない、普通はボツにされるから描いてこないだろうっていうデザインを多分描いてくる子が、「初音ミク」っていう土壌の広さで初めて入ってこれると思うんですよね。
このコンテストの意義ですが、もちろん若手登竜門がひとつであるんですけど。言い方は難しいんですが、普段イラストレーター界隈で描かれるミクでは出ないような、そんな案を描ける人達。例えばデザイナーからしか出ないようなミクとかあると思います。そんな人達が、この企画をきっかけに世に出てきてほしいという想いもあります。

島崎
デザイナー目線の話ですが、絵が上手いのとデザインが上手いかは別のお話なんですよね。もちろん長い目で見ると絵の技術はあった方がいいです。ただ実はちょっと絵の技術が足りない方が執着だけで何かしら伝わるデザインを描けたりする…時もある。時たまその原石のようなデザイン力を持つ人がいて、まだみんなの最大公約数になってない、でも魅力的な何かを見せてくれる。その新しい扉へのスキルとミクさんは相性がいいなと思います。そんなデザインの良さを第一にアピールする人を見つけ出すにもこのコンテストはいいのかなと。
浜子
今回本当によかったなと思ってて。雪ミク勢(雪ミク衣装コンテストの応募者)もたくさん応募してくれています。
カホタン
なるほど。発想力を強みに応募してきてくださってる方もいるんですね。
安藝
うまくなってる人もいるし、発想力も画力もどっちも持ってくれてますね。
浜子
そうですね。もちろん従来の雪ミクよりはフォーマットがない・フィギュア用の絵を描かないといけないので、いつもよりも難しいとは思います。
安藝
そう。ただこれはなんといえばいいか。絵の技術の部分って、フィギュア化する際はどうしても補完しないといけない部分もでてくるじゃないですか。
島崎
そうですよね。多分、原型師さんやグッスマさんの方で解釈を入れなきゃいけない部分もあると思うし、逆に省略するところもあると思います。ただそれって応募する方のハンデには割となりづらいですよね?
安藝
最初足りていない部分でも、会話しながら作っていけばいいかなって僕は思ってるんですけどね、絵描きさんと我々が。
浜子
何か刺さるものがあってのスタートなので、だからこそ会話しながら作っていくことができますよね。
カホタン
そうすると、他のイラストコンテストと比べるのもあれかもしれないですけど、なんかハードルは低い感じはしますよね。
安藝
入り口(のハードル)は多分低いです。
浜子
入り口は低めで、もちろん大賞になるのは大変ですが、他の賞の中には一部、フィギュア化するうえでのラインをすべてクリアしているわけではないけど、「この絵は面白い・素敵!」という気持ちが優先して受賞しているものもあります。
島崎
ガチガチな選考基準・商業的すぎていないのもいいなと思いましたね。
浜子
本当にたくさんの素敵な作品をご応募いただいて。 6/14、15のスマイルフェスで発表した第1回~第6回までの受賞作品も、いっぱい飾ります。

実際にたくさんのイラストが展示されたスマイルフェス東京のブース景気
グッスマイラコンが目指す未来とメッセージ
カホタン
じゃあ最後に、グッスマイラコンが目指すものについて、安藝さんからお願いいたします。
安藝
そうですね。これまでの6回で、このコンテストで選ばれたいとか、フィギュア化されたいと思って望んでくれてる人には、傾向と対策が組める状況が揃っていると思います。「これがこういうふうに選ばれてるんだな」ってわかると思うので、ぜひ予習復習じゃないですけど、しっかりしてもらって、自分の夢を叶える機会にしてもらえたら嬉しいなと思っていますし、一緒に仕事をしたいと思っています。
浜子
うまくこのコンテストを活用してもらえたら、と。
安藝
1年間にわたる大規模なイラコンで、過去にもあったとは思うのだけど、そんなにはないし、フィギュアにもなる。チャンスを作って、それを実際に手にする機会に直結するようなコンテストだと思っています。偉そうに「育成したい」とかそういう気持ちじゃないんだけど、そのきっかけにしてもらえればいいなと思っています。
選考時に応募作品をみていると、「きっと売れるのはこれだよね」みたいになるんだけど、かといってすぐに決めてしまうわけではないです。バランスだったりとか、「やっぱこっちの方が面白いんじゃないの?新しくない?」みたいなとか。「この服は立体化してみたいな」とか。
この企画自体が僕たちにとってもチャレンジで、新しく得るものが欲しいと思うので、もちろん売れそうなことも見ますが、造形的に難しいのをあえて選ぶみたいなのもあったりします。
浜子
たしかに、一緒にチャレンジしたい人を選んじゃうのかもしれないですね。
島崎
これからその人と次の仕事をするときに、「じゃあ次はあなたの発想力と武器で、さらに商業として実るものを目指しませんか」みたいなことができるといいですよね。
安藝
そう。 このコンテストを使ってというわけじゃないですが。これを経て仲間を増やしたいと思っています。島崎さんをはじめ、我々には強力な絵描き仲間チームがありますが、新しい才能・人と会えることを楽しみにしています。
カホタン
ありがとうございました! みなさんのチャレンジをお待ちしております。

Profile
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島崎麻里 / Mari Shimazaki
デザイナー・漫画家。ゲーム業界を中心に幅広く活躍中。
代表作は、キャラクターデザイン『BAYONETTA(ベヨネッタ)』1~3、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』『鉄拳8』など多数。他、漫画『アリアドネの冠』や、『レーシングミク2013』などの衣装なども手掛ける。 -
安藝 貴範
グッドスマイルカンパニー代表取締役会長。
大学卒業後、コナミ株式会社などでの勤務を経て、2001年5月に有限会社グッドスマイルカンパニーを設立。
創業以来、クリエイターの夢を応援し、"共創"の精神でフィギュアを中心にそのビジネスをグローバルに発展させてきた。 -
浜子
グッドスマイルカンパニー企画部所属。ねんどろいどやスケールフィギュアの商品企画を担当。
学生の頃、初音ミクがとにかく好きだったことと、美少女フィギュアを作る仕事に興味があったことから新卒でグッドスマイルカンパニーに入社。
現在は、主に「初音ミク」関連商品やねんどろいどどーるを担当中。